一日の始まり方が妙だった。小説の書き出しに使えそうなくらい。
何かがおかしい、彼はそう感じた。いつものように、「それ」を拾いに行くと、そこには先客がいた。まるで彼が二人現れたかのように、拾う。奇妙な親近感と敵愾心の中、彼は早々と「それ」をあきらめた。仕方がない、と彼が向かったのは行きつけの書店だった。だが彼は入口の前で呆然と立ちつくした。「棚卸しのため休業」そこには小さく見にくい字で印刷された紙切れがテープで貼ってあった。何かがおかしい、そう思いつついったん家に戻った。駐車場にいたのは数匹の猫だった。若者が駅前にたむろするように、その猫たちは額を寄せ合い、何か企んでいるように見えた。